近年、働き方改革の影響により、企業の間では生産性向上への動きが広がっています。
しかし、生産性を上げるためには新たな業務効率化ツールの導入やコンサルティング、人材育成が必要な場合があります。
ただし、特に中小企業ではまとまった予算を用意できず、ツール導入などを踏みとどまってしまっているケースもあります。
そうした中で活用したいのが国や公共団体が用意している補助金・助成金制度です。
働き方改革が広まっている今、要件をしっかりと満たしていれば費用のサポートが受けられます。
本記事では業務効率化のプロが、補助金・助成金制度について詳しく解説します。ぜひ、あなたの会社の働き方改革推進に役立ててください。
業務改善助成金
業務改善助成金とは、中小企業の生産性向上のために事業場内での最低賃金の引き上げを図るための助成金制度です。
中小企業の生産性を向上させるための設備投資(機械設備やコンサルティング、教育訓練等)を行い、最低賃金を一定の金額以上引き上げることができた場合に、その設備投資にかかった費用の一部を助成する制度です。
業務改善助成金の申請条件
業務改善助成金の対象となる事業場の条件は次のようになります。
- 事業場規模100人以下
- 事業場最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
支給のための要件は次の通りです。
- 賃金引上計画を策定すること。事業場最低賃金を一定額以上引き上げる。(就業規則等に規定)
- 引き上げ後の賃金額を支払うこと
- 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと(単なる経費削減のための経費、職場環境を改善するための経費、通常の事業活動に伴う経費などは除く。)
- 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと。
なお、過去に業務改善助成金を受給したことがある場合でも対象となります。
業務改善助成金の支給までの流れ
業務改善助成金の支給までの流れは次の通りです。
1.助成金交付申請書の提出
交付申請書等の書き方と留意事項について – 厚生労働省を参考に、交付申請書(様式第1号)を都道府県労働局に提出。内容に問題がないか審査され、通れば助成金の交付決定通知が届きます。
※生産性向上のための業務改善計画と、賃金引上計画が必要となります。
2.業務改善計画、賃金引上計画の実施
業務改善計画に基づいた生産性向上のための設備投資、賃金引上計画に基づいた賃金の引き上げを行います。
3.事業実績報告書の提出
業務改善計画の実施した結果と、賃金引上計画を実施した賃金の引き上げ状況を基に事業実績報告書(様式第9号)を作成し、都道府県労働局に提出します。
4.助成金額の確定と支払い
内容に問題がないか審査され、通れば助成金額の確定通知が届きます。確定通知を受けたら支払請求書(様式第13号)を提出します。提出後、助成金額が支払われます。
業務改善助成金の助成額
事業場内の最低賃金を下記表の金額分引き上げを行った場合、生産性向上のために投じた設備投資などの費用が一部助成されます。
下記表のように、引き上げ額に応じて申請コースが定められています。
コース区分 | 引き上げ額 | 引き上げた従業員数 | 助成金額の上限 | 対象事業 | 助成率 |
20円コース | 20円以上 | 1人 | 20万円 | 以下の2つの要件を満たす事業場
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内 |
【事業場内最低賃金900円未満】 4/5 生産性要件を満たした場合は9/10【事業場内最低賃金900円以上】 3/4 生産性要件を満たした場合は4/5 |
2~3人 | 30万円 | ||||
4~6人 | 50万円 | ||||
7人以上 | 70万円 | ||||
10人以上 | 80万円 | ||||
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | ||
2~3人 | 50万円 | ||||
4~6人 | 70万円 | ||||
7人以上 | 100万円 | ||||
10人以上 | 120万円 | ||||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | ||
2~3人 | 70万円 | ||||
4~6人 | 100万円 | ||||
7人以上 | 150万円 | ||||
10人以上 | 180万円 | ||||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | ||
2~3人 | 90万円 | ||||
4~6人 | 150万円 | ||||
7人以上 | 230万円 | ||||
10人以上 | 300万円 | ||||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | ||
2~3人 | 150万円 | ||||
4~6人 | 270万円 | ||||
7人以上 | 450万円 | ||||
10人以上 | 600万円 |
※地域別最低賃金900円未満の地域(北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の39地域)のうち、事業場内最低賃金が900円未満の事業場に限り対象となります。
業務改善助成金を使った事例
飲食業の場合(従業員数20名)
- 助成前の最低賃金:時給720円
- 助成にかかった費用:230万円
- 助成された金額:100万円
【賃金引き上げの計画】
助成前の時給720円を初年度に40円、2年目に20円、3年目に40円引き上げ、合計で820円までの引き上げを実施。
【業務改善のために立てた計画】
客席に端末と注文システムを導入し、店員が直接注文を聞かなくても注文ができるようにします。そうすることで口頭での注文による聞き間違いなどのミスをなくし、迅速かつ正確に注文を受けられるように改善を目指しました。
【業務改善で得られた効果】
注文方法を機械化することで、口頭によるミスがなくなり、混雑時でもお客様を待たせることがなくなりました。会計も自動計算になったので迅速に行えるようになり、全体的にサービスを向上させることに成功しました。
造園業(従業員10名未満)
- 助成前の最低賃金:時給750円
- 助成にかかった費用:150万円
- 助成された金額:75万円
【賃金引き上げの計画】
助成前の最低時給750円を初年度に40円、2年目も40円引き上げ、合計で830円までの引き上げを実施。
【業務改善のために立てた計画】
完成イメージを3Dで再現できるCADシステムを導入することを計画しました。CADシステムを導入することで、造園工事の完成イメージがわかりやすくなり、より質の高い営業を目指しました。
【業務改善で得られた効果】
完成イメージを3Dで再現することにより、よりお客様へ伝わりやすくなり、満足度が向上しました。
出典:茨城労働局労働基準部賃金室「業務改善助成金活用事例集」
IT導入補助金
IT導入補助金とは、企業が抱えた課題解決や業務効率化などのために導入されるITツールの費用を一部補助してくれる助成金制度です。
RPAに限らず、ソフトウェア購入費やセキュリティシステム導入費など多岐にわたって補助されます。
IT導入補助金は「通常枠」と「デジタル化基盤導入枠」があり、枠によって補助内容が違うので注意しましょう。
【通常枠】
通常枠は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際の費用の一部を助成し、生産性向上のサポートをする制度です。
費用の一部を助成することで、業務効率化や売上アップへの取り組みを図ってももらうのを目的としています。
【デジタル化基盤導入枠】
デジタル化基盤導入枠は、中小企業や小規模事業者が会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトを導入する際の費用の一部を助成する制度です。これらのソフトは通常枠でも申請できますが、デジタル化基盤導入枠のほうが補助率が高いので注意しましょう。詳しい助成額については後述します。
IT導入補助金の補助対象・金額について
IT導入補助金の補助内容は次のようになります。
通常枠
A類型 | B類型 | |
補助率 | 1/2以内 | |
補助上限 | 30~150万円 | 150~450万円 |
補助対象 | ソフトウェア費・クラウド利用料(最大1年分補助)・導入関連費等 |
デジタル化基盤導入類型
補助上限 | 合計5~350万円 | |
5~50万円 | 51~350万円 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 |
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分補助)・導入関連費等 |
IT導入補助金の支給の流れ
IT導入補助金の支給までの流れは次の通りです。
1.IT導入補助金の概要、申請期間の確認
まずは、IT導入補助金について理解する必要があります。枠によって対象となるITツールや助成額が異なるので注意しましょう。また、基本的には期間が定められているので、決められた期間内に申請を行わなければなりません。そのため、事前に申請期間を確認しましょう。
2.ITツール・IT導入支援事業者の選定
次に、導入するITツールとIT導入支援事業者の選定を行います。会社が抱えている課題や現場のニーズを洗いだし、最大限の効果が期待できるITツールを選びましょう。
導入したいツールが見つかったら、そのツールを取り扱っているIT導入支援事業者に連絡をしましょう。実際に商談を経て、信頼のおける事業者であれば、補助金の交付申請の手続きに進みます。
なお、この段階で契約してしまうと補助金の対象外となってしまうので、交付申請の手続きが終わった後に契約に移りましょう。
3.gBizIDプライムを取得
次に、「gBizIDプライム」の取得をしましょう。
IT導入補助金をはじめ、各種申請や手続きを共通のIDで行うことができるようになります。
gBizIDは公式ホームページから取得することができます。取得まで約2週間程度かかります。
4.SECURITY ACTIONの宣言
次に「SECURITY ACTION」の宣言を行います。
IT導入補助金の申請には「一つ星」と「二つ星」のいずれかを宣言する必要があります。公式ホームページより手続きが可能ですので、こちらも忘れずに行いましょう。
5.交付申請書の提出
次に「交付申請書の提出」を行います。
交付申請は「申請マイページ」から行います。「申請マイページ」とはIT導入補助金の申請を行うことができるポータルサイトです。こちらはIT導入支援事業者からの招待を受けることでログインできるようになります。
ログイン後、交付申請に必要な申請者情報を入力し交付申請をします。交付申請の際は導入するITツールや導入目的、計画などを入力する必要があります。
6.ITツールの導入
交付申請に問題がなければ、事務局から交付決定通知が届きます。通知を受け取ったら、あとは実際にITツールの導入、契約を行います。
7.事業実績報告、補助金交付
きちんと契約から代金の支払いまで行ったかどうかを報告するためにITツールの納品書や領収書などの証拠となるものを申請マイページから提出する必要があります。
事務教区側にて不正がないかを確認し、問題なければ補助金の交付が行われます。
8.事業実施効果報告
最後に、ITツールの導入によってどのような効果を得られたのかを、3年間にわたって報告する必要があります。報告は申請マイページから行うことができます。
IT導入補助金を使った事例
運送業(従業員数31~50人)
【抱えていた課題】
伝票や請求書の作成、集計などを手作業で行っていたため、効率が悪く無駄にリソースを割いていた。
【導入したITツール】
今まで手作業で行っていた伝票作成や集計などを一元化できる販売管理ツールを導入。
【得られた効果】
作業時間を30%以上短縮することに成功し、手作業によるミスがなくなった。
林業(従業員数11~30人)
【抱えていた課題】
ITツールを導入して売上アップを目指したいが、導入のための十分なリソースが用意できず踏みとどまっている状況だった。
【導入したITツール】
ドローンを用いて3Dで森林を解析するツールの導入。
【得られた効果】
ツールの導入で、今まで森林調査にかかっていたリソースを約80%削減することに成功した。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、従業員数が20名以下(一部業種のみ5名以下)の事業者を対象に新たな販路の開拓への取り組みなどを補助する制度です。
補助を受けるためには、指定の方法で事業計画書を作成して補助申請が必要となります。申請内容の審査後、採択されれば一定金額の補助が受けられる制度です。
小規模事業者持続化補助金には「一般型」と「特別枠」の2種類の枠が用意されています。
小規模事業者持続化補助金の助成金額
小規模事業者持続化補助金には「通常枠」と「特別枠」が用意されており、いずれか1つの枠のみ申請ができます。枠ごとに補助率や補助金額が異なるので確認しておきましょう。
類型 | 通常枠 (現行) |
特別枠 | ||||
賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 | インボイス枠 | ||
補助率 | 2/3 | 2/3 (赤字事業者は3/4) | 2/3 | |||
補助上 | 50万円 | 200万円 | 100万円 |
小規模事業者持続化補助金の申請要件
小規模事業者持続化補助金の申請要件は次の通りです。
業種 | 従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5名以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20名以下 |
製造業その他 | 20名以下 |
上記に該当する法人、個人事業主、特定非営利活動法人が対象となります。
また、特別枠には追加の申請条件があります。特別枠に申請する場合、この申請条件を満たしていなければ補助金の交付が受けられませんので注意しましょう。
賃金引上げ枠
【概要】
賃金引き上げの取り組みに対して補助金上限額を200万円まで引き上げる。
【申請要件】
補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上であること。
卒業枠
【概要】
雇用の図化による事業規模拡大の取り組みに対して補助上限額を200万円まで引き上げる。
【申請要件】
補助事業の終了する段階で、小規模事業者の従業員数を超えて規模を拡大していること。(役員・個人事業主本人・親族従業員・休業中の社員・4カ月以内の期間で雇用されるパートタイム労働者は除く。)
後継者支援枠
【概要】
後継ぎ候補者が実施する新たな取り組みに対して補助上限額を200万円まで引き上げる。
【申請要件】
「アトツギ甲子園」のファイナリストになった事業者。
創業枠
【概要】
特定創業支援事業による支援を受けて創業した事業者に対して補助上限額を200万円まで引き上げる。
【申請要件】
産業競争力強化法に基づく「認定市町村」または「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を過去3年の間に受けて開業した事業者であること。
インボイス枠
【概要】
免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者に対して補助上限額を100万円に引き上げる。
【申請要件】
2021年9月30日~2023年9月30日が属する課税期間の間で一度でも免税事業者だった、またはそれが見込まれる事業者のうち、インボイス(適格請求書)発行事業者の登録が確認できた事業者であること。
インボイス(適格請求書)とは、売り手側が買い手側に対し、適用される税率や税額を的確に伝えるための書類を指します。売り手側が買い手側からインボイスを求められたら必ず交付しなければならず、買い手側は交付されたインボイスの保存が必要となる制度です。
小規模事業者持続化補助金の支給までの流れ
小規模事業者持続化補助金の支給までの流れは以下の通りです。
1.小規模事業者持続化補助金の概要、申請期間の確認
まずは小規模事業者持続化補助金について理解する必要がありますので、申請に必要な書類やスケジュールなどについてしっかりと確認しましょう。スケジュールについては補助金事務局ホームページでご確認いただけます。
2.申請の準備
申請に必要な書類や要件を確認したら、補助を受けるための事業を計画し「経営計画書」、「補助事業計画書」を作成します。作成できたらそれらを地域の商工会に提出し、「事業支援系悪書」の交付を受けます。
3.申請手続き
「事業支援計画書」の交付を受けた後、補助金事務局へ必要書類を提出しましょう。提出方法は郵送、もしくはJGrants(Jグランツ)を利用した電子申請が可能です。
4.申請内容
提出した申請内容が日本商工会議所にて審査されます。必要書類がそろっていなければ失格となりますので提出前に必ずチェックを行いましょう。また、審査には優先的に加点される「加点措置」があり、提出内容が加点の対象となった場合は採択されやすくなります。
【加点一覧】
加点項目 | 概要 |
パワーアップ型加点 | 〇地域資源型 地域資源などを活用した新たな製品やサービスを提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画に加点する。〇地域コミュニティ型 地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画に加点する。 |
赤字賃上げ加点 | 賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点する。 |
東日本大震災加点 | 東日本大震災による被害を受けた水産加工会社等に対して加点する。 |
経営力向上計画加点 | 中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して加点する。 |
電子申請加点 | 補助金システム(名称:Jグランツ)を用いて電子申請を行った事業者に対して加点する。 |
事業承継加点 | 代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点する。 |
過疎地域加点 | 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展に繋がる取り組みを行う事業者に対して加点する。 |
出典:日本商工会議所 – R1補正・R3補正小規模事業者持続化補助金〈一般型〉ガイドブック
5.採択・交付通知
申請受付の締め切りから約1~2カ月ほどで採択結果が補助金事務局ホームページにて発表されます。申請内容が採択されれば、後日、交付決定通知書が送られてきます。また、交付決定前の支払いについては補助対象外となりますので、支払いを行う場合は交付決定後に行いましょう。
6.補助事業の実施
交付決定通知書を受け取ったら、あとは申請した補助事業計画に沿って事業を実施していきます。交付決定通知書に記載の交付決定日から補助事業実施期限日までの期間内の支払いのみが補助対象となります。
7.実績報告書の提出
補助事業が終わったら、事業の実施内容・支出をまとめた実績報告書を地域の商工会議所に郵送で提出します。
8.補助金額の確定・交付
実績報告書の内容確認が終わったら補助金額が確定します。確定後、「補助金確定通知書」が送付されますので、受け取ったら補助金事務局で補助金の請求手続きを行います。手続きが終わったら補助金が交付されますので、入金されているか確認しましょう。
9.事業効果報告
補助事業が終わった1年後、「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を作成し、提出する必要があります。
小規模事業者持続化補助金を使った事例
商業・サービス業
宣伝と販路拡大のため、自社サービスのホームページを作成した結果、さっそく申し込みを13件も獲得することに成功。従来は店舗に来店した顧客がメインとなっていたが、インターネットでの販売スタイルを確立することができた。また、顧客管理システムを導入し、顧客1人1人にDMを送ったりするなどの販売促進を実施。
製造業
新築住宅やリフォームなどを行っており、新たにラジオ広告とチラシ配布での広告を実施。県内の2つのラジオチャンネルで3カ月間CMを放送し、チラシは県内で約1万部を配布。その結果、県内を中心に新規顧客からの問い合わせが増加し、そのうち1件を契約までつなげることに成功した。
出典:東北経済産業局【小規模事業者持続化補助金 活用事例集】
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業庁が実施している助成金制度です。
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の略称です。
中小企業や小規模事業者を対象に支給される制度となっており、生産性向上のための新商品・新サービスの開発や生産プロセスの改善を行うための設備投資の一部を助成してくれる制度です。
補助上限額は750万円から3,000万円、ほじょりつ1/2、2/3の制度となっています。
ものづくり補助金の申請条件
ものづくり補助金には「一般型」と「グローバル展開型」の2つの型があり、一般型の中には「通常枠」、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」の4つの枠が設けられています。
枠ごとに補助金額や申請要件が異なりますので解説していきます。
通常枠
【概要】
革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
従業員規模 | 補助上限 | 補助率 |
5人以下 | 750万円以内 | 1/2以内 |
6~20人 | 1000万円以内 | |
21人以上 | 1250万円以内 |
【申請条件】
・事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること。
・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること。
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
回復型賃上げ・雇用拡大枠
【概要】
業況が厳しいながら賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者(※)が行う、革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援。
従業員規模 | 補助上限 | 補助率 |
5人以下 | 750万円以内 | 2/3以内 |
6~20人 | 1000万円以内 | |
21人以上 | 1250万円以内 |
【申請要件】
・前年度の事業年度の課税所得がゼロ
・常時使用する従業員がいる。
・補助事業を完了した事業年度の翌年度の三月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること。
デジタル枠
【概要】
DX(デジタルトランスフォーメーション)に資する革新的な製品・サービス開発、またはデジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。
従業員規模 | 補助上限 | 補助率 |
5人以下 | 750万円以内 | 2/3以内 |
6~20人 | 1000万円以内 | |
21人以上 | 1250万円以内 |
【申請要件】
・①DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること。②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善であること。
・経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向け現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締め切り日までに独立法人情報処理推進機構に対して提出していること。
・独立法人情報処理推進機構が実施している「SECURITY ACTION」の「一つ星」、あるいは「二つ星」の宣言を行っていること。
グリーン枠
【概要】
温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービス開発、または炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。
従業員規模 | 補助上限 | 補助率 |
5人以下 | 1000万円以内 | 2/3以内 |
6~20人 | 1500万円以内 | |
21人以上 | 2000万円以内 |
【申請要件】
・①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発であること。②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善であること。
・3~5年の事業計画期間内に、事業場単位での炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること。
・これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取り組みの有無(ある場合は具体的な取り組み内容)を示すこと。
グローバル展開型
【概要】
海外事業に拡大・強化等を目的とした革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援(①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外所業者との共同事業のいずれかに合致するもの)
補助上限 | 補助率 |
1000万円~3000万円 | 1/2、小規模事業者の場合は2/3 |
【申請要件】
「①海外直接投資」、「②海外市場開拓型」、「③インバウンド市場開拓型」、「④海外事業者との共同事業型」の4ツの類型のうち1つを選び、その類型の各条件を満たす必要があります。詳しい条件については「ものづくり補助金総合サイト」よりご確認ください。
ものづくり補助金の支給までの流れ
1.ものづくり補助金についての概要、申請期間等を確認
ものづくり補助金について理解する必要がありますので、まずは申請に必要な書類やスケジュールなどを確認しましょう。スケジュールについてはものづくり補助金総合サイトでご確認いただけます。
2.事業計画書の作成・gBizIDの取得
ものづくり補助金に申請するための事業計画書を作成する必要があります。どのような事業を行うのかや将来の展望などを記載して提出します。生産性向上のための取り組み内容や事業の革新性、地域経済への波及効果などが審査されます。提出内容が補助するにふさわしい事業計画だと判断された場合は採択されます。
また、ものづくり補助金の申請には「JGrants(Jグランツ)」を使いますので、必ず「gBizID」の取得が必要となります。gBizIDの取得には2週間ほどかかりますので余裕をもって申請しておきましょう。
3.採択結果の確認
審査が終わると事務所より採択結果が発表されます。結果は「ものづくり補助金総合サイト」、「JGrants」で確認することができます。申請が無事に採択されれば、補助金の交付対象となります。
4.説明会・交付申請
採択決定後、補助金を受け取るためには交付申請をする必要があります。また、交付申請をする前に、採択者への補助事業についての説明会が各都道府県で行われます。説明会では手続きの流れや必要な書類などの説明が行われ、スムーズに手続きを済ませることができるため、できるだけ出席するようにしましょう。なお、交付申請に関しては、交付申請書を作成して「JGrants」から申請します。交付申請書には補助事業の見積書などが必要なので準備しておきましょう。
5.補助事業の実施
交付申請が問題なければ事務局から「交付決定通知書」が届きます。交付決定通知書を受け取ったあとから10カ月以内に、申請した事業計画に沿った事業を実施しましょう。また、補助事業の期間外での支払いは補助の対象外となってしまうため、支払いは交付決定通知を受け取ったあとに行うよう調整しましょう。
6.実績報告
補助事業が終わったら、事務局へ実績を報告する必要があります。補助事業の対象経費の支払いや目標の達成度合い・成果などを詳しく報告します。報告手続きが終わったら補助金額の確定通知が届きますので、事務局に確定金額を請求し、交付を受けることができます。
7.事業化状況報告
入金から5年間は毎年事業の報告をする義務があります。補助金自体が何に使われているのかを事業化状況報告書に記載して提出する必要があります。
ものづくり補助金を使った事例
建設業
3Dの計測にも対応していくため最新のレーザー測量システムを搭載したドローンを導入。測量作業時間が従来の1/7まで削減することができました。最新鋭のIT技術を導入したことで、高精度な測量が可能になり土木工事に効果を発揮。顧客からの3D測量のニーズにもこたえることができるようになり収益性向上に繋がりました。
運輸・通信業
物流業界全体が抱えている課題として、人手不足が挙げられます。こちらの事例は物流センター内の様々な業務を一元管理ができるWMS(倉庫管理システム)、そしてトラック一台分を30分弱で荷役する無人フォークリフトを導入しました。その結果、WMSで業務を一元管理することで省力化に成功。人手不足を解消し、労働時間短縮に繋げることができました。
出典:北海道中小企業団体中央会『ものづくり補助金成果事例集2021』
まとめ
本記事では業務効率化に使える補助金・助成金について解説しました。
働き方改革が広まっている今の時代、しっかりと要件を満たせば小規模事業者や中小企業も生産性向上のための取り組みや新しい商品・サービスの展開がしやすくなっています。
こうした補助金・助成金の知識があるだけで業務効率化絵の取り組みを進めやすくなります。業務効率化や事業の拡大をお考えの方はぜひ申請してみてはいかがでしょうか?
本記事がお役に立てれば幸いです。