近年、企業の間で「DX」を推進する動きが強まっています。
DX化を進めるために「DX推進ガイドライン」を参考にしている企業が多いですが、そのガイドラインにはどのようなことが記載されているのでしょうか?
本記事では、DX推進ガイドラインにどのようなことが書いてあるのか、要点をまとめて解説していきます。
DX推進エキスパート
ITツールの導入・運用から経営戦略の立案まで、幅広い専門知識と経験をもってあらゆるDX化に従事しています。
2年前からRPA開発に携わっており、各企業のRPA開発と自社の業務効率化に従事しています。
DX推進ガイドラインとは?
ではDX推進は具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか?
もちろん担当部門に丸投げするだけでは成功しません。
DX化をうまく進めていくために必要となるのが「DX推進ガイドライン」です。
経済産業省から企業に向けて「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」が発表されています。「①DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「②DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築」の2つのテーマで構成されており、DX化の実現に向けて経営層が抑えるべきポイントがまとめられています。
DX推進ガイドラインの主な要点について解説していきます。
①DX推進のための経営のあり方、仕組み
まず、①DX推進のための経営のあり方、仕組みとして以下の5つの点が必要だとされています。
- 経営戦略・ビジョンの提示
- 経営トップのコミットメント
- 推進をサポートする体制の整備、人材育成
- 投資等の意思決定
- スピーディな変化への対応力
経営戦略・ビジョンの提示
DX推進に向けて特に重要となるのが「DX化の目的・ビジョン」です。
企業をどのように成長させていきたいのか、どんな価値を社会に生み出したいのかなど、DX化を通した経営戦略を明確にする必要があります。新たなビジネスを創りたいという目的があれば、そのために必要なITツールの導入や手段を計画することができます。
ただし、具体的な目的がないままだと何から始めていいのかわからず、ITシステムなどの導入を進めても、社内に浸透しないためDX化は実現できません。
DX化を実現させるためには、まずはその目的を明確にしましょう。
経営トップのコミットメント
DX推進において経営層によるコミットメントも重要といえます。
デジタルトランスフォーメーションという名の通り、DX化は企業ごと変革すること指しますので、経営トップが自らの強い意志で臨むことが求められます。
もちろんDX化は簡単なことではなく多額のコスト、それに社内の協力が必要です。企業が一丸となってDX化を進められるようにするためには経営トップがリーダーシップを発揮してDX化を進めることが重要です。
推進をサポートする体制の整備、人材育成
DX化は社内のごく一部のみで進めるのではなく企業全体で取り組むべきものです。そのため、DX推進のための体制を全社的に整える必要があります。
体制づくりのために特に意識すべき点は以下の3点です。
- DX推進に挑戦するマインドセット
- DX推進の担当部署・サポート体制の整備
- DX人材の確保・育成
DX推進に挑戦するマインドセットの変革
マインドセットとは、その人の思考や意識、物事に対する姿勢などの精神面を指します。アナログな話になってしまいますが、DX推進にはこのマインドセットが大きく関係します。
DX推進のためには組織全体を「現状を変えよう」というマインドセットに大きく変革させる必要があります。また、新しいものを想像する意欲や、多様な変化にも対応できる柔軟性をもつことも重要です。
社内の一人ひとりがDX化を成功させようというマインドになることができれば、DX化の成功に大きく近づくでしょう。
DX推進の担当部署・サポート体制の整備
DX推進のためのサポート体制づくりも非常に重要です。
DX化とは企業全体の変革になるので、現場からの反対の声や部署間での反発を生む場合もあります。そうした際にDX推進専門のサポート組織・部門を設置することによって、第三者の立場で現場からの声も加味して進めていくことができます。
万が一トラブルが起きた際も、当事者同士で解決するよりもこうしたDX推進の担当部門を設置したほうが迅速に解決できるでしょう。
DX人材の確保・育成
DX化のためには、その基盤となるITシステムの導入が必要です。しかし、そのシステムを扱えるITスキルを持った人材を確保する必要があります。
社内にスキルを持った人材がいなければ、スキル習得のための勉強会やセミナーへの参加などの社内教育をする必要があります。またはスキルを持った人材を採用することで確保もできます。
DX推進には十分なITスキルを持った人材の確保が不可欠です。
投資等の意思決定
先述した通り、DX化を行う上で多くのコストがかかります。そのため、DX化における予算設定の基準を明確にする必要があります。
- 費用が高いからというだけの理由で踏みとどまっていないか。
- リターンを求めすぎるあまり挑戦を阻害していないか。
- DX化における投資をしないことで、IT化が進む業界から淘汰されるリスクを考えているか。
DX化における投資に関しては上記の点を考慮したうえで、適切な決定をすることが重要です。
スピーディな変化への対応力
IT化が進む今、ビジネスモデルも激しく変化し続けています。
DX化を進めるうえで、世の中の情勢や時代の変化に素早く対応することが求められています。あまりに判断が遅かったり、経営方針の転換に踏みとどまっていると、時代の波についていけず取り残されてしまう危険もあります。
そのため、変化にためらわず柔軟な姿勢で対応できるような社内環境を作っていくことが重要です。
②DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築
「DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築」に関しては「体制・仕組み」と「実行プロセス」の2つで構成されています。
体制・仕組みづくり
DXの基盤となるITシステム構築の体制を作るうえで、以下の3点が必要とされています。
- 全社的なITシステム構築のための体制
- 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
- 専業部門のオーナーシップと要件定義能力
全社的なITシステム構築のための体制
DX化の基盤となるITシステムを導入する際は、限られた部署内ではなくすべての部署を横断して活用できるような体制を整えておくことが必要です。
DX推進担当の部門を設置することで、部署間でのやり取りなどもスムーズに行うことができるようになります。
全社的なITシステム構築に向けたガバナンス
DX化に向けて新たなITシステムを導入する際、部署ごとに別のITシステムを導入するのではなく、全社で使えるITシステムを導入することが重要です。部署ごとで違うシステムを導入してしまうと企業全体のシステムが複雑化し、管理・統制がしにくくなってしまいます。
さらに、ベンダーに任せきりにしてしまうのもシステムの「ブラックボックス化」の要因となってしまうので丸投げは避けましょう。
社内のシステムが複雑化しないよう、かつブラックボックス化を避けて企業全体にとって最適なシステムを導入しましょう。
専業部門のオーナーシップと要件定義能力
先述した通り、ベンダーに丸投げは禁物です。
部署それぞれがオーナーシップを持ち、DXを通して何を実現したいのかを明確にし、ベンダーからの提案も踏まえたうえで企業全体で最適なシステム構築をすることが重要です。
DX化は企業全体を通した変革が目的なので、丸投げはせずに、そしてそれぞれの部署と一丸になって進めていきましょう。
実行プロセス
「実行プロセス」に関する要件は以下の3点です。
- IT資産の分析・評価
- IT資産の仕分けとプランニング
- 刷新後のITシステム:変化への追従力
IT資産の分析・評価
新しいITシステムを導入する前に、現状を分析・評価することが大切です。
利用中のPCや既存システム・ソフトウェアの中には、ほとんど使われていないものや不要なものもある場合があります。現状の環境を洗い出すことによってDX化を進めやすくすることができます。
IT資産の仕分けとプランニング
現状の分析・評価を行ったら、現状のIT資産の仕分けと新しいシステムのプランニングを行いましょう。
廃棄・刷新するシステムとそのまま残すITシステムに分け、そのまま残すシステムに関してはDX化に向けて新しいシステムどのように連携していくかなどを計画しましょう。
刷新後のITシステム:変化への追従力
新しいITシステムを導入しただけではDX化とは言えません。
変わりゆくビジネスモデルに対応できているのか、そしてシステムを刷新したことで企業全体にどのような変化が生まれたかが重要なポイントとなります。
ITシステムを基盤として企業の成長と新たな価値を生み出してこそ「DX化」といえます。
そのため、ITシステム導入後も継続的に時代の変化に追いついていくことが求められます。
また、DX推進ガイドラインにはDXの基盤となるITシステムの構築方法や、DX化に向けての考え方なども詳しくまとめられていますので、DX化に取り組む際はまずはこちらを読み進めていきましょう。
デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン│経済産業省
失敗しないDX推進の手順はこちらの記事をご覧ください。