近年、業務効率化ツールとして注目を集めている「RPA」ですが、今続々と導入する企業が増えています。
今や様々な業種で活躍しているRPAですが、どのような業務で使われているのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではRPAがどんな事に向いているのか、そしてどんな業務を行っているのかを実際にRPAの開発・運用をしているプロ目線で解説します。
業種別に分けてご紹介しますので、あなたの業界でどのような活躍をしているのか、ぜひ参考にしてみてください。
RPA開発歴4年 / MICHIRU RPAエキスパート認定 / 業務改善アドバイザー
RPA導入代行サービスCoreBeeを運営しており、RPA開発に取り組む他、業務改善アドバイザーとしてあらゆる業種の業務改善に携わっている。
2年前からRPA開発に携わっており、各企業のRPA開発と自社の業務効率化に従事しています。
RPAで絶対に得する業務とは?
あなたの会社にはこういった業務はありませんか?
- 流れが決まっている業務
- 繰り返し業務
- Webから情報収集
これらの業務はRPAで絶対に得できる業務です。
なぜなら、これらの業務はRPAが最も得意な業務だからです。
こうした業務が負担となっているのであれば、RPAの導入効果を最大限に受けることができますので非常におすすめです。
RPAが得意な業務と苦手な業務
RPAにも得意・苦手な業務があります。
RPAが得意な業務の場合は企業にとって様々なメリットが生まれます。
- より重要な業務にリソースを充てることができるようになる。
- 残業時間を削減し労働環境の改善につながる。
- RPAに置き換わることで人件費などのコスト削減につながる。
このように、RPAの得意な業務を積極的に自動化することで企業の生産性アップに繋がります。
ただし、苦手な業務の場合はRPAの導入効果は思うように得られないでしょう。
RPAの導入で最大限に効果を発揮させたい場合は、まずRPAの得意・苦手な業務を理解する必要があるでしょう。
RPAが得意な業務
まずはRPAが得意とする業務について解説します。
流れが決まっている定型業務
RPAは開始から終了までの一連の流れが決まっている業務に向いています。
例えば、
- 請求書などの帳票作成
- レポート作成
- システムへのデータ入力
などの業務が当てはまります。
RPAは決まった流れに沿って動くのが得意なので定型業務は特に向いている業務です。
繰り返し業務
RPAは同じ動作を繰り返す業務にも向いています。
例えば、
- メール送信
- 顧客情報の転記作業
などの業務が当てはまります。
繰り返し業務は同じ作業を長時間繰り返すため、従業員のストレスにも繋がりやすく、入力ミスも発生しやすくなってしまいます。
RPAは同じ動作を繰り返すことが得意なので、こうした業務にはうってつけのツールです。
RPAを導入することにより入力ミスも無くなり、リソース削減もできるというメリットがあります。
データ収集・集計業務
RPAにはWebのスクレイピング機能があります。
Web上から情報を集めて集計する作業というのは本来であればとても手間のかかる作業です。
ただし、RPAを使えばWebから情報を一括で取得できるだけでなく、見やすい形に加工までしてくれるツールがあります。
なので市場での価格帯を調べたり、サイト内にかかれている口コミだけを一括取得したりすることができます。
RPAが苦手な業務
続いてはRPAが苦手なことについて解説します。
自ら考える事が必要な業務
先ほど解説したとおり、RPAはあらかじめ流れが決まっている業務においては最大限効果を発揮しますが、逆に言うと決められたこと以外は何もできないということです。
例えば、
- ルール化されていない業務
- 人間の思考や判断が必要な業務
に当てはまる業務です。
ルール化されていない業務というのは開始から終了までの手順が決まっておらず、そのときによって流れが変わってしまう非定型業務を指します。
人間の思考や判断が必要な業務というのは作業中のトラブル発生時に臨機応変に対応したり、問題解決のために解決方法を考えたりという、いわば人間にしかできない業務を指します。
RPAの場合は流れが決まっていない業務には対応できません。
また、作業中にイレギュラーな事態が発生した場合、その事態に対応できずに動作が止まってしまうことがほとんどです。
要するに、RPAは思考や判断ができないのでそれを必要とする業務には向いていません。
もしあなたの会社で自動化したい業務が思考や判断を要するものであれば、RPAには向いていないので一度見直す必要があります。
RPAをうまく活用した業種別の事例一覧
今や様々な業種でRPAが使われており、どの業種でもRPAの特徴が活かされています。
本記事では以下の業種についてRPAの導入事例をご紹介します。
- 製造業
- 事務職
- 自治体
- 経理部門
- 営業職
- 建設業
製造業
導入前の課題
製造業でRPAが用いられる業務といえば主に受発注処理や在庫管理といった業務になります。
受発注処理の場合、例えばクライアントから送られてきた発注をシステムに登録したり、注文データを元に発注書類を作成してメール送付したりなどの業務があります。
在庫管理の場合であれば、商品ごとの在庫数を集計し報告する業務などがあります。
これらの業務は製造業ではほぼ毎日行われています。
大量の商品情報を扱うので終わるまでかなりの時間がかかってしまい、かつ入力ミスをするとトラブルに繋がる可能性が大きいのが課題とされています。
RPAの導入効果
RPAを導入することで、クライアントから送られてきた注文をシステムに登録したり、商品ごとの在庫数を取得して報告書類を作成したりすることがすべて自動化できます。
自動化することで足りなかったリソースが確保できたり、人件費の削減に繋がったりとRPAを導入することで大きなメリットが得られます。
受発注処理や在庫管理などの業務はほとんどの場合、開始から終了まで流れが決まっているため、RPAに置き換えることができれば最大限の効果を得られるでしょう。
実際の導入事例
- クライアントごとの注文内容を手入力で基幹システムへ入力している。
- 請求書を手入力で作成している。
- 手入力だと時間なかかり入力ミスなどの課題がある。
- 注文内容を基幹システムへインポートする作業を自動化。
- CSVファイルを基に請求書を自動で作成しメール送信。
- 作業時間70%削減に成功。
事務職
導入前の課題
事務職といえば特に定型業務が多いのではないでしょうか。
データ入力や転記作業はもちろん、メールの送受信やExcelを使った業務が日々行われています。
このような定型業務に限らず、電話の応対や郵便物の仕分けなどの業務もあるので、日々大量の事務処理に追われ、残業時間の増加や従業員のストレスが問題視されています。
RPAの導入効果
データ入力やExcelを使った事務処理はすべてRPAで自動化できますので、RPAが動いている間に別業務を行うなどで効率的に業務を行うことができるようになります。
事務職はRPAが得意とする業務が非常に多いため、RPAを導入することにより業務効率が飛躍的に上がります。
RPAの導入によって、問題視されている残業時間も削減でき、さらに事務職員の負担も減らすことができるため労働環境の改善にもつながるでしょう。
実際の導入事例
- 問い合わせ内容の転記作業をすべて手作業で行っていたので、作業時間、入力ミス、人件費などが大きな負担となっていた。
- 問い合わせ内容の転記作業を自動化。
- 月間120時間の作業時間削減に成功。
- 転記作業をすべて自動化することにより人件費が不要になった。
自治体
導入前の課題
自治体では各種申請の受付や登録業務が非常に多く、特に定型業務が多いとされています。
また、近年急速に加速している少子高齢化による労働人口の減少の影響も受けて、人手不足に悩まされている自治体が多いようです。
人手不足に悩まされる中、日々行われる転記作業や入力作業などの定型業務は貴重な人の手を奪ってしまうので大きな課題とされています。
RPAの導入効果
RPAを導入することで、例えば住民からの申請データをシステムに入力したり、システム間の転記を大量に繰り返したりなどの定型業務をすべて自動化できます。
こういった作業を自動化することにより、職員の負担を大幅に減らすことができ、より円滑に業務を進めることができます。
実はRPAを導入する自治体が今続々と増えています。その理由としてはやはり人手不足が深刻化し、早急に手を打たなければ安定した行政サービスを提供できなくなってしまうからです。
2021年4月に総務省で公表された「令和2年度 地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」によると、RPAやAI技術の普及率は以下の通りとされています。
- 都道府県:83%
- 指定都市:80%
- その他市区町村:31%
これから予想される少子高齢化による深刻な人手不足に対応していくことができるでしょう。
実際の導入事例
- 農耕地の賃貸借権の設定状況や利用状況について、農地情報公開システム(全国農地ナビ)へのデータ入力
- 手入力の場合だと合計で約1,450時間かかる想定。
- 約1,450時間の作業時間が約40時間まで削減された。
- ロボットによる作業のためもちろん入力ミスなし。
経理部門
導入前の課題
経理は事務職と同じくあらかじめ流れが決まった定型業務が多く、RPAとの親和性が高い業種の一つです。
例えば、
- 伝票の転記
- 請求書や給与明細などの帳票作成
- 決算書類の作成
このように、同じ作業を繰り返す業務が非常に多いです。
そのため、事務と同じように長時間の繰り返し作業による従業員のストレスや入力ミスなどが課題となっています。
RPAの導入効果
日々繰り返す経理の業務をRPAに置き換えることができれば、最大限に効果を実感できるでしょう。
RPAを導入すれば、転記作業はもちろん、Excelからデータを取得し一括で帳票を作成したり社員の給与明細なども自動で作成することができます。
RPAに置き換えることで業務効率を大幅に向上させることができ、従業員の負担を減らすことができます。
実際の導入事例
- ネットバンキングのデータを1件ずつ手作業で会計システムへインポートしているが、時間がかかり入力ミスが発生すると修正が難しい。
- 会計システムへのインポート作業の自動化。
- 月間40時間の作業時間削減に成功。
- 入力ミスをなくすことに成功。
営業職
導入前の課題
営業職といえば、事務や経理のようなバックオフィス業務は少なく、RPAが活躍するイメージはつきにくいかもしれません。
しかし、営業職のなかにも以下のような業務があります。
- 顧客情報の管理
- 情報収集
- レポート作成
などの業務があります。
これらの業務は人の手で行った場合かなりの時間や労力が必要となり、本来の業務である営業にリソースを十分に割けないという課題があります。
RPAの導入効果
RPAを導入すれば、顧客情報の管理や情報収集、レポート作成に至るまで大幅な業務効率化が図れます。
膨大な数の顧客データの転記作業や、Web上からサイト内の商品価格を一括取得することも可能です。また、Web上から取得したデータをExcelに出力してレポートを作成することができます。
RPAで効率化ができれば、本来の業務である営業によりリソースをかけることが可能となり、結果的に企業の利益アップも期待できます。
実際の導入事例
- 物件データの情報を基幹システムへ手入力。1件あたり20分程度かかるものを月100件前後処理している。
- 基幹システムへの入力作業を自動化。
- 月間約34時間の作業時間削減に成功。
建設業
導入前の課題
建設業界ではホワイトカラーと同じように膨大な量のバックオフィス業務があります。
例えば、
- 顧客情報の管理
- 予算表の作成
- 発注書の作成
- 提案書の作成
というような、PC上で完結する業務がたくさん存在します。
建設業界の場合だとそれらの業務を現場監督が手作業で行っている場合があります。そのため、定型業務にリソースを取られてしまい残業時間の増加や入力ミス、リソース不足が課題となっています。
RPAの導入効果
RPAを導入することにより、顧客情報の入力作業や資材の発注作業などを自動化することができます。より効率的に定型業務を行うことにより現場にかかる負担を減らし、より重要な業務に集中することができます。
建設業界でもRPAによる業務効率化は可能ですが、実は他業種に比べるとRPAは浸透していません。建設業界では未だに紙などアナログな手段が残っているところが多いので、これからの時代に向けてRPAなどのIT技術の導入を進めていく必要があるでしょう。
実際の導入事例
- 見積書・発注書などの作成を手入力で行っている。
- 見積書・発注書などの書類作成を自動化。
- 月間40〜60時間の作業時間削減に成功。
まとめ
本記事で解説したとおり、RPAには得意な業務と苦手な業務が存在します。
RPAの得意な業務が多ければ多いほど自動化しやすく、導入効果を発揮させやすいです。
- 顧客データの管理
- データの転記作業
- 帳票の作成
- 情報収集
- Excelファイルの作成・保存
こういった業務が負担となっていると感じる会社はすぐにでも自動化するのがおすすめです。
今後、加速していくであろう労働人口減少の波に対応していくために、率先してRPAなどのIT技術を導入して業務効率化を進めていく必要があるでしょう。