近年、企業の業務効率化ツールとして「RPA」の導入を考えている企業が増えてきています。
RPAを導入して業務の負担を減らすことで生産性向上に繋がりますが、RPAの導入にはさまざまな費用が発生します。RPAにかかる費用を見誤ってしまうと想定以上にコストが膨らんでしまったり、結果的に損してしまったりする恐れがあります。
特に中小企業は大企業と比べて、導入コストと効率化によるコスト削減のバランスが非常に重要です。
そこで本記事では、
- RPAの導入費用とは?
- 導入費用について知っておきたいポイント
- 導入費用を抑えるコツ
この3点について、実際にRPAを開発・運用代行をしているプロが解説していきます。
RPAの導入を考えている中小企業の方で、RPAの導入費用をできるだけ抑えたい、どのくらい費用がかかるのかを知りたいとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
RPA開発歴4年 / MICHIRU RPAエキスパート認定 / 業務改善アドバイザー
RPA導入代行サービスCoreBeeを運営しており、RPA開発に取り組む他、業務改善アドバイザーとしてあらゆる業種の業務改善に携わっている。
2年前からRPA開発に携わっており、各企業のRPA開発と自社の業務効率化に従事しています。
RPAの導入費用とは?
RPAの導入費用といってもさまざまな種類があり、大きく分けると以下の4つがあります。
- 初期費用
- ライセンス費用
- サポート・メンテナンス費用
- コンサルティング費用
これらの費用はRPAを導入する上でほぼ必ずかかる費用になりますので、まずはこちらについて解説していきます。
かかる費用の種類
初期費用
1つ目にかかる費用は初期費用です。
導入時に最初にかかる費用ですが、こちらはRPAの動作タイプによって価格帯はバラバラです。
- デスクトップ型:0〜50万円ほど
- クラウド型:0〜50万円ほど
- サーバー型:数百万〜数千万円ほど
RPAの動作タイプは大きく3つに分けることができます。
「デスクトップ型」と「クラウド型」のRPAツールについては、小規模の運用にも対応しているものが多く、初期費用ゼロで始めることができるツールもあります。
一方「サーバー型」のRPAツールは初期費用もかなり高額になります。なぜなら、サーバー型のRPAはPC数十台から数百台での大規模な運用に対応しているものが多く、中小企業というよりも大企業向けに作られたRPAツールがほとんどだからです。
このように動作タイプによってだいぶ金額に差がありますので、社内の業務と合った性能のRPAツールを選びましょう。
中小企業の場合は小規模運用から始められるデスクトップ型、クラウド型のRPAツールがおすすめです。
ライセンス費用
2つ目はライセンス費用です。
ほとんどのRPAツールの場合、初期費用とは別でライセンス費用が発生します。RPAツールを利用している期間中はずっとかかるため予算オーバーに注意しましょう。
こちらもRPAツールによって金額にばらつきがあり、ツールによっては月額か年額、もしくは買い切りに分かれています。
また、RPAの開発まで行える「フル機能版」と、開発機能はないがフル機能版より安価で使える「実行版」に分かれているRPAツールもあリます。
フル機能版で開発を行うにはRPAを扱うスキルを要するので、RPAスキルをもった人材いない場合は実行版を導入するか、導入代行サービスを使うのがおすすめです。
サポート・メンテナンス費用
3つ目はサポート・メンテナンス費用です。
有料のRPAツールの場合、ベンダー(RPAツールの提供元)によるサポートを受ける場合に発生する費用です。
例えば、
- RPAスキル習得のための研修
- 運用中のトラブル解決
- 製品に関する質問への回答
- ツールのアップデート
などといったサポートを受けるためにも費用がかかる場合がほとんどです。
社内でRPAスキルを持った人材を育成したい場合や、運用中のトラブルに備えておきたい場合はこうしたサポートに加入するのがおすすめです。
コンサルティング費用
4つ目はコンサルティング費用です。
こちらはRPA導入代行サービスを使った場合に発生する費用です。
RPAを実際に現場で稼働させるためには以下の準備をする必要があります。
- 自動化する業務の選定
- ツール選び
- 導入作業
- 運用・保守
このように、RPAを導入するだけでもかなりの手間やコストがかかりますが、代行サービスを使うことで導入から運用まで全て任せることができます。
特にRPAスキルを持った人材がいない場合や、人手不足でRPAの運用担当者を決められないなどの悩みを抱えた中小企業で使われています。
実際はどのくらい費用がかかるのか?
続いては、実際にどのくらいの費用がかかるのか、内訳の具体例を企業規模別でご紹介します。
大企業の場合
項目 | 金額 |
初期費用 | 150万円 |
ライセンス費用 | 60万円〜/月 |
サポート・その他費用 | サーバー維持費:30万円/月 サポート費用:5万円/月 |
大企業の場合、RPA運用にかけられる予算が多く、PC数十〜数百台を使った大規模な運用を目的とする場合が多いです。
そのため、導入するRPAツールはデスクトップ型やクラウド型と行った小規模向けのRPAツールではなく、大規模運用にも対応したサーバー型のRPAツールが選ばれています。
また、サーバー型の場合は自社でサーバーを用意する必要があります。サーバーのメンテナンス費用などもかかるためトータルでのコストはかなり高額になります。
中小企業の場合
項目 | 金額 |
初期費用 | 10万円 |
ライセンス費用 | 10万円/月 |
サポート・その他費用 | サポート費用:5万円/月 |
中小企業の場合、大企業のような大規模な運用ではなくPC1台からの小規模な運用を目的とする場合が多いです。
そのため、高額な費用がかかるサーバー型のRPAツールよりもスモールスタートに向いているデスクトップ型、クラウド型RPAが選ばれています。
デスクトップ型とクラウド型の場合、インターネットがなくても動作可能なデスクトップ型がおすすめです。デスクトップ型であればネット環境を介さずに動作できるのでセキュリティ面でも安心できるでしょう。
中小企業が導入するのであれば、まずスモールスタートが可能で、なおかつセキュリティ面でも安心できるデスクトップ型がおすすめです。
個人事業主の場合
項目 | 金額 |
初期費用 | 無料 |
ライセンス費用 | 5万円〜/月 |
サポート・その他費用 | なし |
個人事業主の場合、比較的安価なRPAツール、もしくは無料ツールが導入されることが多いです。
複雑な業務をさせるわけではなく、PC1台で完結するシンプルな作業を自動化するために導入している場合がほとんどなので、企業で導入されているRPAツールと比べると比較的安価に抑えられていることが多いです。
やはり企業単位で導入するのに比べると、RPAにかけられる予算の関係上、無料ツールや安価なツールが選ばれているケースが多くなっています。しかし、現在リリースされているRPAツールの中には中小企業や個人事業主などの小規模事業者向けに、安価で使えるRPAツールも充実してきています。
大企業で導入されているような大規模運用には対応しておりませんが、単純な事務作業などを自動化するのであれば安価なツールでも十分効果を発揮できます。今やRPAは企業のためだけではなく個人でも使えるツールになっています。
社内で導入から運用まで完結させる場合
RPAの導入から運用まで社内で完結させる場合もさまざまなコストが発生します。
内製化する場合にかかる費用
まず、RPAを自社ですべて完結させるには開発から運用までできる高度なRPAスキルを持った人材の確保が前提となります。
そのような人材を確保するためには、新たに採用するか社内の人材にRPAスキルを習得してもらうかのどちらかになります。
採用するのであれば人件費が発生しますし、人材育成をする場合でもスキル習得のための勉強などセミナーなどに費用がかかります。
また、人材確保に成功しても、万が一その人材が離職・異動をした場合のリスクについても考えておかなければなりません。
メリット・デメリット
RPA運用を内製化するメリットは主に以下の点です。
- コストの削減ができる。
- より現場に合ったRPAを導入できる。
1つ目のメリットはコストの削減ができる点です。
ロボット作成や運用、保守を代行サービスに外注する場合、業者にもよりますがかなりの費用がかかる場合があります。
ただし、RPAスキルを持った人材の確保に成功すればわざわざ外部に頼ることなくRPAを運用できますので、外注費を削減できる場合があります。
2つ目のメリットはより現場に最適なRPAを導入できる点です。
社内でRPAの開発から運用まで十分にできるスキルを持った人材がいれば、外注するよりも業務に対する理解が深いため、より現場に最適なRPAを導入することができます。
RPAを内製化するデメリットとしては、RPAスキルを持った人材の確保が難しい場合は内製化できないという点です。
一から人材育成する場合は習得まで時間がかかりますし、新規採用をする場合もなかなか求めている人材が見つからない可能性もあります。
また、RPA運用の担当者が万が一離職した場合にはRPAを扱える人材が社内からいなくなってしまい、RPA自体止まってしまう恐れがあります。これは属人化と呼ばれ、また一から人材を確保しなければいけないリスクがあります。
内製化と代行どっちがいい?
RPA運用を内製化することによってコスト削減や最適なRPA導入ができるというメリットがあります。
ただし、内製化するまではかなりのコストと時間がかかりますので、内製化までのリソースを十分に注げるのであれば代行サービスを使う必要はありません。
ただし、
- 人材確保が難しい。
- 内製化までのコストや時間をかけたくない。
- あまりメリットを感じない。
これらに当てはまる場合は導入代行サービスを使うのがおすすめです。
導入代行サービスをおすすめする理由がこちらです。
- 内製化するのに比べ、導入から運用までのスピードが早い。
- RPAのプロによるサポートが受けられる。
- 属人化のリスクを避けることができる。
特に中小企業の場合、RPAスキルを持った人材の確保・育成に多くのリソースを注ぐことができない場合が多く、RPAの内製化が難しい傾向にあります。
導入代行サービスを使えばRPAの専門家によるロボット作成から運用、それ以外にもさまざまなサポートを受けることができます。
RPAのプロによるサポートを受けながら安定して運用し続けることができるのが導入代行サービスを使う最大のメリットと言えます。
RPAの導入費用について知っておきたいポイント
RPAの費用について、導入前に知っておきたいポイントを解説します。
料金体系
RPAの料金体系はツールによってさまざまです。
記事冒頭で解説したとおり、初期費用やライセンス費用、サポート費用などが発生します。
ライセンス費用については「月額」もしくは「年額」が一般的です。
また、RPA開発までできる「フル機能版」と開発機能がついていないがフル機能版よりも安価で導入可能な「実行版」に分かれているツールも存在します。
サポートの有無
RPAツールの中には、有償でのサポートを提供しているものがあります。
運用中のトラブル対応やRPA開発スキル習得のためのトレーニングなど、RPAスキルがない場合でも安心してRPAを使うことができます。
中にはサポートもライセンス料金に含まれていたりする場合もありますが、別途で加入が必要な場合もありますので注意が必要です。
RPA導入前にはサポートの有無と範囲を確認することも大切です。
費用対効果
RPAの導入効果といえば主にこれらが挙げられます。
- 業務効率化
- コスト削減
- ヒューマンエラーの防止
- 従業員の満足度アップ
などの効果がありますが、大事なのは具体的な費用対効果です。
費用対効果は「定量的効果」と「定性的効果」に分けれられます。
定量的効果とは具体的な数値で表せる効果のことです。例えば、RPAの導入効果として最も大きな指標の1つである人件費の場合であれば、数値化できるので定量的効果になります。
削減できた人件費=1件あたりの作業時間×年間の処理件数×担当者の時給
上記の削減できた人件費がRPAの運用コストを超えていれば費用対効果があるといえます。
実際に私たちが開発・運用代行をしているRPAの費用対効果をご紹介します。
1件あたりの作業時間(3時間)×年間の処理件数(240回)×担当者の時給(2000円)=1,440,000円
私たちが提供しているRPAを導入した場合は実際にこれだけの費用対効果がありました。このように計算することで実際にどれくらいの効果が出ているのかを数値化することができます。
定性的効果とは数値化することができない効果のことです。例えば従業員の満足度やミスの防止などが定性的効果になります。定量的効果とは違い、数値化して算出することができないため計測が難しいとされています。
ただし、定性的効果は企業全体の生産性向上の条件として無くてはならない重要な効果になります。
定量的効果と定性的効果はRPAを運用する上で大事な指標となりますので、ぜひ押さえておきましょう。
導入費用を抑えるコツ
続いてはRPAの導入費用をできるだけ抑えるコツをご紹介します。
業務範囲の把握
導入費用を抑えるコツ1つ目は業務範囲の把握です。
RPAツールにはスモールスタートが可能な安価なツールもあれば、大規模運用向けの高額なツールがあります。
ツール選びの際は、自動化したい業務の範囲をあらかじめ洗い出しておき、その業務に対応したRPAツールを選ぶことが重要です。
単純にRPAの性能だけを見て高額なツールを導入してしまうと、必要以上に高機能のため、コストだけが膨らみ逆に損してしまう可能性があります。
ツール選びの際は自動化したい業務をしっかり洗い出しておき、必要十分な機能のツールを選び無駄なコストを抑えていきましょう。
助成金の利用
導入費用を抑えるコツ2つ目は、RPA導入にも使える助成金を利用することです。
近年の少子高齢化に伴う労働人口減少の影響もあり、企業では業務効率化や人手不足の解消といった課題に直面しています。
そのため、企業の間では業務効率化の為にITツールの導入が急速に進んでいますが、RPA導入には高額な費用が発生します。特に中小企業の場合、RPAに十分な予算を捻出することができず、導入に踏み切れていないケースがあります。
そういった企業を対象に以下の助成金制度が用意されています。
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
十分な予算を用意できない場合はこれらの助成金制度を使うことをおすすめします。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、企業が抱えた課題解決や業務効率化などのために導入されるITツールの費用を一部補助してくれる助成金制度です
RPAに限らず、ソフトウェア購入費やセキュリティシステム導入費など多岐にわたって補助されます。
50万円以下のITツールは3/4まで補助され、それ以外のITツールの場合350万円が上限で2/3が補助されます。
ただし、企業規模などによって条件もありますので、詳しい内容については公式サイトをご覧ください。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者を対象に、労働環境の改善や設備を改善するために新たなツールの導入する際の費用を一部補助してくれる制度です。
補助率は基本的に1/2(条件を満たせば2/3まで補助)で最大1,000万円まで補助されるので、RPA導入の費用負担を大きく減らすことができます。
詳しい条件などについては公式サイトよりご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、従業員数が20名以下(一部業種のみ5名以下)の事業者を対象に新たな販路の開拓への取り組みなどを補助する制度です。
補助を受けるためには、指定の方法で事業計画書を作成して補助申請が必要となります。
申請がとおれば50万円が補助されます。また、募集時期や詳しい条件等は公式サイトをご確認ください。
まとめ
本記事で紹介したとおり、RPAの導入費用には知っておきたいポイントがいくつも存在します。
最適なRPAツールを選ぶには、社内業務と照らし合わせてしっかり見合った価格と性能を持ち合わせているのかが重要になります。無駄な費用を払わずに費用対効果を上げていくためにも、運用方針をしっかり設定することが大事なポイントです。
また、補助金の申請などについても条件や時期が変わるので、申請条件を満たすことができれば忘れずに申請しましょう。
この記事があなたの会社のRPA導入のお役に立てれば幸いです。ぜひRPAで企業全体の生産性アップを目指していきましょう。