社内の定型業務を自動化するツールとして「RPA」の導入が多くの企業で進んでいます。
RPAを導入することで、今まで手作業で行っていた業務を自動化することができます。それによって業務効率化やミスの削減などさまざまなメリットがあります。
しかし、RPAをただ導入するだけでは効果は発揮できません。期待通りの効果を出すために、RPA導入においてしっかり抑えておくべきポイントがあります。
特に中小企業の場合は、RPAツールだけでも大きなコストになってしまうので失敗は許されないというケースも多くあります。
そこで本記事では、
- RPAがもたらす効果
- RPAの導入目的
- 運用中の注意点
について、実際にRPAを開発・運用をしているプロの目線で解説していきます。
「一体何のために導入するのか」、「どんな効果が出るのか」を詳しく知ることができますので、ぜひあなたの会社のRPA導入にお役立てください。
RPA開発歴4年 / MICHIRU RPAエキスパート認定 / 業務改善アドバイザー
RPA導入代行サービスCoreBeeを運営しており、RPA開発に取り組む他、業務改善アドバイザーとしてあらゆる業種の業務改善に携わっている。
2年前からRPA開発に携わっており、各企業のRPA開発と自社の業務効率化に従事しています。
RPAの7つの効果
RPAを導入することで企業にはこのような効果が期待できます。
- 定型業務の効率化
- 生産性の向上
- ワークライフバランスの実現
- ヒューマンエラーの低減
- 新たな事業の創出
- 人材不足の解消
これらについて、具体的にはどんな効果が得られるのかを解説していきます。
定型業務の効率化
1つ目に得られる効果は「定型業務の効率化」です。
定型業務とは開始から終了までの流れが決まっている業務を指します。
例えば、
- データ入力
- データの転記作業
- メール送信
- 請求書などの作成
などの業務が定型業務に当てはまります。
これらの業務をRPAで自動化することによって、まず業務をこなすスピードが格段に上がります。また、ロボットが処理することで入力ミスなども無くなります。
実際に導入してどう変わったのかを見てみましょう。
- 問い合わせ内容の転記作業をすべて手作業で行っていたので、作業時間、入力ミス、人件費などが大きな負担となっていた。
- 問い合わせ内容の転記作業を自動化。
- 月間120時間の作業時間削減に成功。
- 転記作業をすべて自動化することにより人件費が不要になった。
- クライアントごとの注文内容を手入力で基幹システムへ入力している。
- 請求書を手入力で作成している。
- 手入力だと時間なかかり入力ミスなどの課題がある。
- 注文内容を基幹システムへインポートする作業を自動化。
- CSVファイルを基に請求書を自動で作成しメール送信。
- 作業時間70%削減に成功。
このように、RPAを導入することで定型業務による現場への負担を軽くすることができます。
生産性の向上
2つ目に得られる効果は「生産性の向上」です。
定型業務をRPAに置き換えることによって、それまで定型業務をこなすのに充てられていた人件費などのリソースを削減することができます。
そのため従来よりも少ない労働力で高い生産性を実現することができます。
これからの時代は少子高齢化の加速による働き手の減少が企業の課題とされています。人手不足に陥ってしまう前に、RPAなどを使って今後も高い生産性を維持できるような体制づくりが重要です。
ストレスの軽減
大量のデータ入力や転記作業といった同じ動作を長時間繰り返す業務は、従業員のストレスを招きやすく、集中力の低下や入力ミスが発生しやすくなる原因となります。
これらの業務をRPAに置き換えることにより、長時間の繰り返し業務から解放され、従業員のストレスをなくすことができます。また、ロボットが業務を行うため入力ミスは無くなります。
こうした業務で入力ミスなどが目立っている場合、従業員のストレスが原因の場合もありますので、早急に対策することをおすすめします。
ノンコア業務からの脱却
ノンコア業務とは、定型業務や繰り返し業務のような判断や思考を伴わない単純作業を指します。その逆の意味で、人間にしかできない企業の利益に直結する重要な業務のことをコア業務と呼びます。
日々大量のデータ入力やメール送信などのノンコア業務によって、コア業務が圧迫されている企業もあります。
RPAを導入すればノンコア業務をロボットに任せることができます。
そうすることでノンコア業務はロボットが行い、コア業務だけを人間が行うという仕組みが出来上がります。
ノンコア業務に充てていた時間をコア業務に集中させることができれば、より企業の利益を追求できる理想的な現場へと変わるでしょう。
ワークライフバランスの実現
3つ目に得られる効果は「ワークライフバランスの実現」です。
2019年4月より「働き方改革関連法」が政府から施行され、企業の間では働き方改革へ向けた取り組みが進んでいます。働き方改革の中で特に重要視されているのが、従業員のワークライフバランスの実現です。
企業が成長していくにつれて、特にバックオフィス業務の量が増えていき、残業時間の増加や従業員のストレスを生んでしまうリスクがあります。ただし、日々業務はこなしていかなければならないため、増えていく業務をそのままにしていると徐々に現場が疲弊していきます。
RPAを導入することで、業務量が増えてもその都度RPAで自動化すればそのようなリスクは生まれません。
増えていく業務をロボットに置き換え、従業員をコア業務へ充てることにより業務に対する達成感や満足度を向上させることができます。
残業時間の削減にもつながるので、RPAでワークライフバランスを実現することが可能です。
24時間365日稼働
RPAはロボットのため24時間365日無休で稼働させることが可能です。
従来であれば、休日に溜まったバックオフィス業務を休日明けに処理する必要がありましたが、RPAは休日も自動で稼働させることができますので、休日明けの大量の事務処理をなくす事ができます。
そのためRPAは、年中無休で離職のリスクもないロボット従業員のような存在といえます。
残業時間を減らせる
RPAを導入することによって残業時間の削減を行うことができます。
データ入力や転記作業、請求書の印刷などの単純作業が大量に残ってしまうと、そのせいで残業時間が増えてしまったり、残った業務を終わらせるために休日出勤などしなければいけなくなる可能性があります。
このような課題もRPAを導入することで解決することができます。
特に中小企業の場合、常に人手が足りていないので、このような業務が残ってしまい残業しないと終わらないケースが多いです。
そのようなお悩みを抱えている場合は、ムダな業務はRPAに任せて労働環境の改善を進めていきましょう。
ヒューマンエラーの低減
4つ目に得られる効果は「ヒューマンエラーの低減」です。
特にデータ入力や帳票作成などの事務作業の場合、手作業だと入力ミスなどのリスクがあります。このような業務をRPAで自動化すれば、ロボットによる操作のため入力ミスが無くなります。
さらに業務スピードも格段に上がるので、より効率的に業務をこなすことができるようになります。
プレッシャーからの解放
RPAは従業員をプレッシャーから解放することができます。
実はデータ入力や転記作業といった、決まったデータを打ち込む業務は従業員へ与えるプレッシャーが特に多いとされています。
なぜなら、特に経理・会計部門や金融関係での入力作業は、ささいな入力ミスが大きなトラブルにつながる可能性があるためです。
従来では入力ミスが出ないようにするため何重にもチェックを行ったりするので、従業員へのプレッシャーはもちろん、チェックのための時間もかかり非常に効率が悪くなってしまっているケースがあります。
ところが、RPAを導入すればロボットが処理するため手作業による入力ミスが無くなります。そのため「ミスをしてはいけない」という従業員へのプレッシャーが無くなり、ストレスフリーな労働環境を作ることができます。
新たな事業の創出
5つ目に得られる効果は「新たな事業の創出」です。
先ほども解説したとおり、RPAを導入することによってコア業務へ充てられるリソースを確保できます。
単純な事務作業などのノンコア業務をロボットに任せることで、確保できたリソースを新しい事業の立ち上げに充てたり、新たな商品開発や販売計画に充てることができるので、自社の拡大や競争力の向上につながるでしょう。
手作業によるムダを徹底的になくして、人間にしかできない業務を集中することができるようになります。
人材不足の解消
6つ目に得られる効果は「人材不足の解消」です。
近年、少子高齢化による影響で労働人口の減少が問題視されています。
特に中小企業では慢性的な人手不足に悩まされている企業が多く、企業の規模拡大に歯止めをかけている原因となっています。
働き手が減っていくことで、企業ではより少ない労働力で最大限の利益を生み出さなければいけないという課題があります。
それを実現させるためのツールをしてRPAの普及がどんどん進んでいます。
RPAを導入することで、限りあるリソースをノンコア業務からコア業務へ切り替えることができますので、人手不足を解消し、従来よりも生産性向上につながります。
RPAの導入目的
RPAを導入するにあたり、何のために導入するのかという目的を立てることが重要です。
目的ははっきりしないままRPAを導入してしまうと、期待した効果を発揮できなかったり、社内のRPAに対する理解を得られずに放置されてしまう可能性があります。
例えば、
- 人手不足を解消するため
- ヒューマンエラーを無くすため
- 従業員のモチベーション向上のため
- 企業全体でのDX化を進めるため
RPAを導入して何を実現したいのかという目的を立てることで、導入するRPAツールや社内での展開方法を絞ることができます。
RPAの導入に失敗する可能性も減っていくので、導入前には目的の設定を忘れずに行いましょう。
導入がゴールではない
よく陥りがちなのが、RPAの導入を目的としているケースです。RPAを現場で実際に運用するまでにはそれなりの時間やコストがかかりますが、「RPAの導入」は決してゴールではありません。
RPAの導入はあくまでも目的を達成させるための手段であり、RPAを使って何を実現したいのかという目的こそ本当のゴールと言えます。
RPAを導入したにも関わらず、設定した目的を達成できなければゴールとは言えませんので、RPAを導入して何がしたいのかを具体的に決めておくことが重要です。
社内全体で取り組む
RPAの効果を最大限に引き出すためには、RPAに対する理解と協力を社内全体に浸透させていくことが必要です。
RPAの導入目的や効果を社内全体で共有することで社内でRPAを運用するための体制を整えやすくなり、導入後も安定して運用することができるでしょう。
逆に社内のごく一部だけでRPA導入を進めてしまった場合、現場からの理解を得られないがために連携に支障が出たり、操作方法がわからずRPAが放置されてしまったりという失敗のリスクがあります。
そうならないためにも、RPAの導入前にはまず社内全体に理解を得られるように働きかけることが重要です。
RPAを導入した先の未来
RPAを導入することで業務効率化やコスト削減など様々な効果が期待できますが、運用していく上でさまざまな改善点が出てきます。
運用中も現場からの声を引き出し、改善を繰り返してRPAを最適化していきましょう。
また、RPAを導入してから実際にどのくらいの効果がでているのかを把握する必要があります。
これは「費用対効果」と呼ばれており、費用対効果は「定量的効果」と「定性的効果」に分けれられます。
定量的効果とは具体的な数値で表せる効果のことです。例えば、RPAの導入効果として最も大きな指標の1つである人件費の場合であれば、数値化できるので定量的効果になります。
削減できた人件費=1件あたりの作業時間×年間の処理件数×担当者の時給
上記の削減できた人件費がRPAの運用コストを超えていれば費用対効果があるといえます。
実際に私たちが開発・運用代行をしているRPAの費用対効果をご紹介します。
1件あたりの作業時間(3時間)×年間の処理件数(240回)×担当者の時給(2000円)=1,440,000円
私たちが提供しているRPAを導入した場合は実際にこれだけの費用対効果がありました。このように計算することで実際にどれくらいの効果が出ているのかを数値化することができます。
定性的効果とは数値化することができない効果のことです。例えば従業員の満足度やミスの防止などが定性的効果になります。定量的効果とは違い、数値化して算出することができないため計測が難しいとされています。
ただし、定性的効果は企業全体の生産性向上の条件として無くてはならない重要な効果になります。
定量的効果と定性的効果はRPAを運用する上で大事な指標となりますので、ぜひ押さえておきましょう。
まとめ
本記事では、
- RPAの導入効果
- RPAの導入目的
- RPA導入後のポイント
について解説しましたがいかがでしたでしょうか?
RPAには「ヒューマンエラーの防止」や「ワークライフバランスの実現」、「業務スピードアップ」などさまざまな効果があり、RPAをどうにゅうすることによって企業全体の生産性向上に繋がります。
期待どおりの効果を発揮させるためには、導入目的の設定、RPA導入に向けた社内共有、運用中の改善が重要です。
せっかく導入したRPAが失敗に終わってしまわないよう、本記事で解説したポイントを踏まえてRPAを導入し、企業全体の成長につなげていきましょう。